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執筆者の写真smo inc

二項対立を乗り越え進化していく丸井、次世代への共創

更新日:2023年3月7日

東京都心部のターミナル駅至近を中心に店舗を展開する丸井。

業態のトランスフォーメーションに向けて、体験価値の提供や顧客との

エンゲージメントの場として店舗を活用し「売らない店」、「イベントフルな店」づくりをすすめています。常に時代の一歩先を先取りし、

新しい買い物体験を提供してくれる丸井の青野 真博社長に、これまでの

軌跡とこれから、そして丸井の理念について、お伺いしました。


(インタビュー:SMO 青山 永、平原 依文)


 


平原:今日は丸井さんのこれまで、そして創造していきたい未来についてお話しできればと思います。まずは丸井さんの歴史からお聞かせください。


青野さん:当社は1931年に創業いたしました。最初は家具の月賦販売店として、机などの家具を販売し、その代金を貸し付けることをやっていました。今は、小売と、フィンテックと、未来投資、この三位一体のビジネスモデルなのですが、当時から小売と金融サービスの2つで回っていました。その後、1960年にクレジットカードを日本で初めて発行したのが丸井です。月賦という金融サービスをカードビジネスとして確立していきました。


平原:まさに、先駆者として活動されていたんですね!


青野さん:社会的価値でいうと、当時は月賦屋さんって質屋と一緒で大通りから少し隠れたところにお店があって、お金がないのが恥ずかしいから、ちょっと隠れて、月賦でモノを買うという存在でした。今でいう百貨店さんは、富裕層がターゲットですが、その当時は家具という必要な消費財を月賦で販売し、見過ごされがちな人も誰でも手に入れられる、そういう生活を送ってほしい、そんな思いで月賦魂を大事にしてビジネスをやってきました。


平原:社会の人々を後押しするような存在でいらしたんですね。では、青野さんがそんな丸井に入社した理由などをお聞きしてもよろしいですか?


青野さん:飽きっぽい性格なので、ひとつの事をやり続けるのではなく、色々な仕事をやりたいと思っていました。就職活動当時から、丸井は金融ビジネスと小売をやっていて、小売には販売もあれば、仕入もある。いろいろな仕事をさせてくれるので飛びついて入ったという経緯です。


平原:一番最初はどんな職種だったんですか?


青野さん:販売です。初めて売ったのはメンズの財布でした。最初売り場に立つときって、知識もないし、レジの打ち方もわからないじゃないですか。だから、かなり緊張して、ドキドキしていたんですけども、お客さまがいらっしゃると、プロとして、なんでも知ってるかの如く、こちらはなに革の財布で、使うほど飴色の味が出てきますみたいな話をしながら(笑)10分くらい接客をし、最後にありがとうございますって時に、そのサラリーマンのお客さまが、自分のほうを見て、にっこり笑って、ありがとうって言ってお帰りになられたんですよ。自分にはそれが結構衝撃的な経験で、すごく嬉しかった。その興奮が、モノを初めて売ったという体験だけでなく、売って、他人から感謝される、こんな仕事ってすばらしいな、ずっと続けていきたいと思いました。それが今の原点ですね。


平原:今もなお、いろいろなお客さまとお話しされていると思いますが、青野さんから見た接客ってなんでしょう。


青野さん:そうですね、接客って実際にはモノを売ることだけが接客ではなくて、むしろ販売以外の接客がすごく大事だと思っています。優秀な販売員さんに共通して言えるのは聞く力なんですよ。売り込む力ではなく、そのお客さまがどういう理由で今このお店にいらっしゃって、どんな時間にこの商品を見てらっしゃるのか、そういうことを聞き出しながら、お客さまのニーズや関心に一緒に寄り添って会話をしていく。そういったサポートが接客なんじゃないかなと思います。


平原:一方通行ではなく、対話形式に一緒に考えていく存在ですね。マルイさんにはいろいろなブランドが入っていますが、青野さんから見た、いいブランドの定義とはなんでしょうか?


青野さん:難しいですね(笑)。いいブランドの定義がだんだん変わってきている。あるいは、コロナによってガラッと変わったんじゃないかなとは思います。

知名度とか売上高とか利益率とか、そういう経済的な価値を物差しとして、良いブランドか悪いブランドかを測っていた時があったと思うのですが、今、お客さまの価値観が少しずつ変化して、社会的な価値一人のため、世のためにお役に立っているかどうか、これがかなり重要になっているのではないでしょうか。


平原:最近の事例とかありますか?


青野さん:物を作るときの、商品の価値そのものだけじゃなくて、その背景にある世界観、そういったものを大事にしているブランドが、お客さまの心をぐっと掴んで、「あ、そこまでやっているんだ。」ということが、買い物の質的な満足感につながるんじゃないかなと思います。


平原:単なる社会貢献ではなく、ビジネスを通じて社会課題を解決することに第一線となって取り組んでいる企業がほとんどかなと思うのですが、そこは意識しているんでしょうか?


青野さん:私たちは、90年間ビジネスを持続させてきた。この持続性は、かなり大事だと思っています。本業を通じて、世の中の、お客さまの役に立つこと。そういう意味で、社会的価値というのは2つあって、一つは単純に地球に負荷をかけないこと。もう一つ大事だなと思うのは、ただ地球に負荷をかけないのではなく、楽しい、おいしいといった一人一人の感情や、興味関心、つまり自分が好きだと思えるような情緒的な側面、その人の生き方とか価値観とか自己実現、そいった寄り添えるようなものとセットになると、より持続可能になるのではという仮説を持っています。


平原:それ、いつもすごく感じます。社会課題の解決となると寄付みたいなことが多いかなと思うのですが、初めて、有楽町マルイでトニーズチョコレート(注1)さんのポップアップに行った際に、価格はチョコレートとしては高いのですが、援助のためというより、なんか楽しそうで参加したいと思って買うと、さらにみんなで一緒に力を合わせて、まさに、買い物から変えていくSDGsみたいなものを体現することができて。(注1:オランダ発のフェアトレードチョコレート。強制労働の無いカカオ生産で、貧困から抜け出せない農家の人々を助ける。)

青野さんの思う「本物」の定義も教えていただけますか?


青野さん:普通は、結構難しくて深い話になると思うのですが、自分は、笑顔なんじゃないかなと思います。人のため・世のためにつながること、さっきのサラリーマンの方のその笑顔が、お客さまの役に立っている証じゃないですか。笑顔には、未来とか、救いとかを感じるんですよね。人を笑顔にすることをもっと積み重ねていくことがビジネスでも大切で、まさに、笑顔から考えないと広がらないんですよね。さっきのトニーズさんじゃないけど、楽しくやる、みたいにアプローチを変えることで、みんなが集まってくる。


平原:なんか楽しそうだな、え、実は社会貢献だったの!?みたいな。


青野さん:みんなが楽しくなる、買いたいって思うことを、つなげていくことが大事ですよね。


平原:今回のテーマがパーパスドリブンカンパニーへの軌跡としているのですが、丸井さんはパーパスを策定されていますか?


青野さん:パーパスという言葉ではないですが、当社グループでは創業以来大事にしていることをミッション、ビジョン、フィロソフィー、コアバリューと定義付けて、共創理念体系として言語化しています。

齊藤さんの本を読ませていただいて、どれに当てはまるんだろうと考えたんですが、

「信用の共創」がパーパスに近いんじゃないかと。これは、創業以来やってきたことを見つめ直して私たちの存在意義は何か、と考えたときに改めて再確認し位置づけです。


青山:ビジョンのところの、「二項対立を乗り越える」も、非常に丸井さんらしい言葉ですよね。


青野さん:自分はこの「二項対立を乗り越える」というビジョンが大好きなんです。普通、企業のビジョンって誰もが否定しないような、最大公約数的なやつじゃないですか。だけどこれは、そんな言葉遣いするかなってぃうごつごつした感じです。ビジョンを策定するときに最初はスリーサステナピリティとかよくある感じの(笑)が出来たのですが、皆、ちょっと違うんじゃないかって。で、いろいろ議論して、「ニ項対立を乗り越える」になったのですが、役員にとっては、特に共感できる。ビジネスを通じて二項対立を乗り越えるってすごく難しい。本業のビジネスとして持続可能な中で、社会の課題を解決しつつ、お客さまに満足していただき、株主の利益も保つ、というのはかなり難しいことなんです。自分たちが毎日仕事でやっているので、その大変さが言葉に表れているんですよね(笑)




青山:世の中、対立や矛盾だらけじゃないですか。それを乗り越える、しかもビジネスを通じて、というのは本当に感銘を受ける理念だなと思います。社員の方にも、もっとここをわかってもらいたいというものはありますか?


青野さん:ミッション、ビジョン、フィロソフィーということを使って誰かを巻き込んだり、何かを変えなきゃいけない時に、自分の言葉で話せないと、なかなか人には通じないですよね。知識として、社員が暗唱するくらいにはなっていますが、それだけでは、人の心は動かせないじゃないですか。自分ごととして、咀嚼して、誰かに伝える、自分の行動やチームとして変えていく、そうなって初めて、理念に近づくことができるので、ただお飾りみたいに飾っていても意味がない。


平原:青野さんが社員の皆さんとお話しする際にも、意識されていますか?


青野さん:意識しますよ。たとえば、どんな仕事だとしても、今期の目標を達成するというのが何のためにやるのかしっかりと共有できないと弱い。利益を通じて日本から海外の子供たちの人権を守るとか、地球に少しでも負荷をかけないようなビジネスを継続することで、

それ以外の排気などを減らしていくとか。その意味が分かっていれば、今まで以上に、そこに力が入る。それに、売れないときに、そこで止まらずに、だったら、いらっしゃったお客さまに商品の良さをどう伝えたら伝わるだろうと工夫するとか、内発的なモチベーションと

いうんですかね、動機が生まれるじゃないですか。それは、目的とか意味が共有できていないと、できない。評価や給料上げますよといって実現しようとしても、なかなか難しいんですよね。


平原:社員さんのお仕事が、その先にある景色をどう変えていけるのかまで伝えることを意識すると違うってことですよね。

最後に、先ほど、未来に残したい本物が笑顔とおっしゃっていましたが、より多くの笑顔を丸井さんから作り上げていくために、今後力を入れていきたいこと、創造していきたいことって何ですか?


青野さん:今、三つテーマを掲げて取り組んでいます。一つは将来世代の方々と共につくる。これはいかに地球に負荷をかけないようなビジネスにしていくか。規模が大きくない丸井としては、明確なオリジナリティを出していきたい。その時に、大量生産、大量消費でないライフスタイルを1つの選択肢とし、買い物を通じて、地球に負荷が少ないとか、あるいは社会の課題解決という内容に変えていきたい、100%は実現できなくても、半分実現できていたら、全然違うんじゃないかと。

もう一つは一人一人の好きを応援。個々が自分らしくありたいという思いが強くなっていますから、これに寄り添うということ。例えば小売では、楽しいイベントをお店の中で展開してファンが集まるような、韓流ファンの集まりの横で歌舞伎をやっていたら、これもいいよね、と思っていただけるような。そういう発見がある店に変えていくことで、一人一人の好きを応援するビジネスにしていきたい。あともう一つは共創なんですけど、丸井だけでなく、SMOさんやいろいろな方と組んで、一緒に変えていきたい。で、その時に丸井のリソースを使っていただけると、すごくありがたいと考えています。


平原:ぜひ、今後も一緒に共創していければ嬉しいです。今日はありがとうございました。



 

青野真博


株式会社丸井代表取締役社長兼

株式会社丸井グループ 上席執行役員

84年丸井(現丸井グループ)入社。

レディス事業部長を経て、

11年丸井 取締役、19年丸井專務兼

丸井グループ上席執行役員。

20年7月より現任。

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