京都を本拠地とする京阪電気鉄道を傘下に持つ京阪グループのビオスタイルが手がけるスキンケア&バスプロダクトブランド「NEMOHAMO」。こちらのリブランディングにあたり、SMOがパーパスを起点としたブランディングのお手伝いをさせていただきました。今回はビオスタイルの森英貴氏と、新しいビジュアルデザインを手掛けたベルリン在住のデザイナー川上恵莉子氏に、リブランディングの過程についてお伺いしました。
(インタビュー:SMO 齊藤 三希子)
齊藤:まず、NEMOHAMOというブランドについてお聞かせ下さい。
森さん:関西を走る京阪電車という鉄道を中心とした京阪グループの次の時代に向けた取り組みとして、2014年から新規事業開発プロジェクトを開始しました。
この頃、当社が開業100年を過ぎたあたりで、明治時代から地域密着の鉄道事業を中心にしながら街づくりをやってきたのですが、次の100年を考えた時に、新しい価値観を提供するようなことができないかと考え、2014年にスタートさせたのがビオスタイルプロジェクトです。
当時、日本のコスメ&食の世界では、オーガニックというキーワードで新しいライフスタイルが広がりつつありました。その際、たまたまご縁があってビオマーケットという会社がグループ傘下になりました。その当時ですでに35年くらい、当時まだメジャーでなかった有機野菜を作る契約農家さんを広げながら、日本にオーガニック文化を定着させようと活動されていた会社です。その辺りをきっかけに、オーガニックをキーワードにビジネスを展開していくことになりました。
同じタイミングで京都の四条河原町に事業用地を取得したこともあり、そこに京都から発信できるような新しいカルチャーの拠点を作ろうということで拠点開発型のプロジェクトとしてプロジェクトがスタートしました。
その後、ビオスタイルという会社を設立し、現在ではグッドネイチャーステーションというホテルを中心とした施設事業と、プロダクトブランド事業をメインに展開するに至っています。そのプロダクトブランドの大きな軸がコスメブランドのNEMOHAMOになります。プロジェクトを開始した当時はプロダクトブランドを展開する計画まではなかったのですが、発信性やオリジナリティを追求した結果、自分たちでプロダクトブランドを展開することになりました。
お店作りを検討していく中で、大きな店舗規模を想定すればするほど、結局日本にあるものを全部集めてくるとか、欧米の物をキュレーションして輸入するとか、そんな発想になり、それはそれでいいのですがオリジナリティが薄れていってしまうと思いました。一方で、流通面では、大手スーパーがオーガニック業態の展開を開始したりして、店舗に置くオーガニック系商品のニーズも増えていたので、プロダクトブランドをつくれば、自社店のオリジナリティだけではなく、ビジネスチャンスにも繋がると考えました。
齊藤:最初はセレクトショップ的なところからスタートして、より良い品揃えやニーズを模索していった結果、オリジナルのプロダクトをつくっていくということになったわけですね。
森さん:はい、やるならとことん自信のある物を作ろうということで、製法に差別化ポイントを置きました。例えばアメリカでしたらUSDA(アメリカ農務省によるオーガニック認証制度)などの認証があるのですが、日本のコスメには独自のオーガニックの基準がありません。オーガニックコスメをOEMで作るとなると、海外基準に準拠して作れるメーカーさんは日本にも多くあるのですが、どうせならそれを超える独自性は作れないものかと考えました。パートナーとなるメーカーを探す中で、展示会などを通して出会ったのが、今作っていただいている福岡県にある美容薬理さんという会社です。
この会社の独創的な点は、化粧品を原料から作られている点です。化粧品は、基本的には原料メーカーから仕入れた原料をメーカーそれぞれの処方で混合して作る商品というのが一般認識ですが、美容薬理さんは、混ぜ合わせる主要な原料を植物からエキスを抽出するところから作られています。その植物自体も基本的には契約農家さんなどトレーサビリティがあるところから取り寄せていて、本当にこだわり過ぎているくらいオリジナリティの溢れる作り方をされていると感じました。
「本当にオーガニック」なコスメとは何なのかを考えながら探していた中で、ただ単に農薬を使ってませんとか、オーガニックの成分が何パーセント入ってますということではなくて、畑の作物を吟味して、そこからエキスを抽出して、石油由来の原料を一切使わずに植物原料のみで作るというポリシー・作り方に触れて、これこそがオーガニックなんだと感じました。どうせ1からのスタートなので、これくらい振り切ったパートナーさんとブランドを作る方が面白いということで生まれたのがNEMOHAMOです。
植物の力をそのまま感じられるプロダクト
森さん:NEMOHAMOという名前の由来は「根っこも葉っぱも」から来ているのですが、植物の色んなパワーを閉じ込めたコスメということで、それを肌や髪に届けようというのをポリシーにしています。原料自体は100パーセント自然由来の成分を使用しており、界面活性剤も含めて石油由来のものは一切使っていません。ローションに至っては、植物生体水100%で作られており水すら使用していません。
基本的なラインナップとしては、スキンケアの基礎化粧品と、シャンプー&トリートメントを中心としたヘアケアのラインです。共通してオタネニンジンをシグネチャーの原料としておいます。これはいわゆる朝鮮人参または高麗人参と呼ばれるものですが、江戸時代に日本に持ち込まれて以来300年くらい日本で育てられている国産のものを指します。NEMOHAMOでは、対馬で作られた非常に原種に近いものを使用しています。一般的には和漢として知られるオタネニンジンですが、血行を活性化するなど肌を健やかに保つ力があります。
NEMOHAMOでは、これを根っこだけでなく、土から上の葉や茎や花などを全部エキス化して使っているのが特徴です。
齊藤:デザイナーの川上さんは、ドイツ在住でいらっしゃいますが、最初にNEMOHAMOを使ってみての印象はいかがでしたか。
川上さん:いわゆるオーガニックコスメは、癒される系のアロマの香りの物が多かったのですが、NEMOHAMOのローションを使った時に、凄く土っぽいような、公園に出かけた時に感じるようなにおい、植物そのもののにおい・・・一般的なオーガニックコスメをイメージした時のにおいとは違っていて、思ってたものと違うというのが第一印象としてありますね。
齊藤:それは良い意味で裏切られたといった感じでしょうか。
川上さん:そう、それまで私もオーガニックコスメというものに対して何となくイメージするものがあったのですが、実際に商品を使ってみて、オーガニックコスメとは何かを一回、立ち戻って考えるきっかけになりました。
森さん:香りが草っぽいとおっしゃっていただいたのは、植物そのものの香りをお届けする方がNEMOHAMOらしいという思いがあり、あえてカバーするような賦香をしていないからです。
スキンケアのベースの香りは京都の北部に自生するクロモジから抽出した精油です。これに原料植物のヨモギやカキドオシなどの薬草的な香りも加わって、独特の香りとなっています。人によってはこの香りが癖になるという方もいて。これが植物ですよっていう香りがむしろ清々しいとおっしゃっていただく方もいますね。
齊藤:今までのオーガニック化粧品とは違うポジションで、伝えたいことを嗅覚にも訴えて、オーガニックを感じられるというわけですね。川上さんがそれをつけてみて、効果はどうでしたか?
川上さん:デパートコスメは化学っぽいぶん、効果をすぐに感じられる気がするのですが、オーガニックコスメは朝になってると乾いているイメージでネガティブな印象でした。それが、NEMOHAMOに関しては朝に乾燥しているといった感じがないですね。
リブランディング〜 パーパス策定からクリエイティブ刷新まで
齊藤:NEMOHAMOのブランドがローンチしてから4年目に入ったとのことですが、今回リブランディングしようと至った経緯までお聞かせください。
森さん:ローンチして3年経って、もっと市場に浸透させていかなければいけないなと思っていました。もちろん、市場への浸透はコミュニケーションや販路などトータルの側面もあるので、ブランディングだけでは解決しないのは承知しているのですが、国内市場ではこの3年間でナチュラル&オーガニックの分野に色んなブランドが増えてきて、他のブランドとどこが違うのかが、メディアや消費者の方にちゃんと伝わっていないと感じていました。他のオーガニック化粧品と同様に、化学的な原料を使用していない点や、環境配慮・サステナビリティという考え方が訴求のメインになってきてしまっていて、競合が増えてきた中で、埋もれていたと感じました。
今の環境を見つめた時に、もう一度何を大事にするべきか、クリエイティブの部分だけでなく、考え方をきちんと定めた上で、差別化・ポジショニングを見直したいなと考えたのがきっかけです。そこで、SMOさんに入ってもらって、一緒にワークショップをしてNEMOHAMOの在り方を探りなおしてから、新しい方向性を決めていくことになりました。
齊藤:やってきたことは正しいけど、その伝え方をさらに進化させるために、SMOがお手伝いに入らせていただき、まずはワークショップをして、ブランドのコンセプトやパーパスをチームの皆様と掘り下げていきましたね。その結果、「100年続く美しさに責任を持つ」というNEMOHAMOのパーパスを策定され、その上でリブランディングをしていくことになりました。そこで新しいクリエイティブに挑戦ということで、川上さんに入っていただくことになったのですが、その時に川上さんが、こういうことをやるべきだな等、感じたことを教えていただきたいです。
川上さん:他のオーガニックブランドをリサーチしたり、NEMOHAMOのプロダクトのプロセスを聞いてみたりして、色んな方向から考えたその上でいったんフラットにしてみた時に、オーガニックコスメが世に溢れすぎてそれらの表現も凄く画一的で、「オーガニックコスメはこうあるべき」というイメージが何となく出来上がってきている状態な気がしました。
NEMOHAMOのプロダクトの作り方はすごくユニークで、水を一切使っていないということに一番驚いたのですが、まるで漢方のように植物そのまま届けるという漠然なところから、植物そのまま一本ボトルに入っているイメージが頭の中に湧いてきて。
ブランドブックにはすでに「自然のまま強く美しく生きていく」というブランドコンセプトがあったので、もう一回NEMOHAMOにとって「自然のまま」とか「強い」「美しい」とはどういうことなのか向き合ってみたいなと思ったのが、ビジュアルを作るスタートになります。
齊藤:改めて向き合って掘り下げていく中で、既存のオーガニックコスメと大きく違う特徴など、そこで見出したものは何だったのでしょうか。
川上さん:先ほどの香りの話にも通ずるのですが、自然そのものの強さというか、圧倒される部分・・・、今までのオーガニックコスメのイメージの優しい・静かな・いい香りというイメージとは別の、NEMOHAMOを使った時に感じた自然を表現したいと思いましたね。
自然って私たちが知らない多くの側面があって、ゼラニウムやラベンダーなどの優しいイメージだけではなく、もっとたくさんの顔や色があるし、まだ出会ったことのない驚きが多くあるのに、そこに目を向けられておらずに、「作られた自然」でオーガニックコスメが出来上がっていると。他と違うユニークな商品を作っているという点で、表現も既存市場の視点ではない切り取り方をしようって決めました。
計り知れない自然の力 そこにある美しさの表現
齊藤:最初のプレゼン時に、考え方やビジュアルのサンプルを見せていただいて、森さんの最初の印象はどうでしたか。
森さん:揺れている水面の写真にビビッドな色を組み合わせたビジュアルが、「自然の美しさ」をこんな感性で切り取るんだ!と、とても印象的でした。そこに新しさとパワーを感じたのをすごく覚えています。
齊藤:自然の力強さにルーツがあるということを伝えつつ、化粧品ってエモーショナルな部分もものすごく必要になってくるので、皆が「欲しい!」と気持ちが上がるような部分を、クリエイティブの力でどう引き出すのかが課題でしたが、そこを「こういう感じで来るのか!」といった感じで、川上さんがスパッと明快にしてくれたのを私も覚えています。
森さん:自然の美しさと向き合うところが怖いぐらいで、「美しさを問う」というキャッチフレーズも「ああ、こういうことか」って。オーガニックコスメのイメージってとにかくシンプルみたいなものが多くて、シンプル=自然という印象になっていると思うんですけど、自然の複雑さをあえて表現しきるというのが凄いなと思いました。
川上さん:最初は思い切って、優しさとは反対のイメージに振り切ったようなクリエイティブにしましたね。
齊藤:一般的なオーガニックコスメの商品って、パッケージなどビジュアルはシンプルでロゴだけみたいな風潮がある中で、複雑な自然の力強さを感じさせるビジュアルで。
森さん:「自然って本当はそんな単純なものじゃないんだよね」と考えさせられましたね。
川上さん:これだけ多くのオーガニックコスメ商品がある中で、いくら商品がユニークだとしても、そこに話を聞いてくれるまでの道を作らないといけない。それがビジュアルデザインの役目なのですが、ビジュアル一枚で語るのってすごく難しくて、あくまで入口だと思った時に、他とは違うインパクトを残すというのは凄く意識した点ですね。
齊藤:二度見しちゃうような、引っかかるというか残る感じが必要というのを、川上さんのデザインで見事に解決してくれましたね。そうして出来上がった、新規ビジュアルがこちらですね。
齊藤:川上さんの作品は、似たものを作ることはされていなくて、それぞれ本当にオリジナリティが強いものだと思うんですけど、これを仕上げてアウトプットする過程の中で、どんな思いで作られたのか教えていただきたいです。
川上さん:基本的には先ほどの「美しさを問う」を中心に据えて、今見せられている自然の美しさって誰かが切り取った一部分でしかなくて、そこだけではない美しさが多くあり、それを見つけることが、新しいものへの見方や新しい美しさを発見すること、さらには自分の再発見に繋がる、といった思いを込めて作っていました。
できるだけデザインするにあたって、見たことないものや通り過ぎてしまうもの等にフォーカスし、枝のラインだけを残してみたりとか。植物って花にフォーカスされることが多い中で、蕾や枝の面白さを選んで構成していきましたね。
齊藤:少しデザインの解剖をしたいと思うのですが、構成がすごく複雑ですね。一番下に水面があって、枝があり花があり、というのは、何か意図があったのでしょうか。
川上さん:二つの要素を組み合わせたデザインラフから始まったのですが、何かすごく綺麗なまま収まりが良くなってしまっただけだなと思って。
でも綺麗なだけじゃ見過ごしちゃう。なにか引っかかるものを作りたいなと思って、これは何なんだろう?っていう気持ちを掻き立てるような、できるだけ収まらないデザインにしようと、色んな要素を組み合わせました。
齊藤:なるほど。森さんはそれをご覧になってどう思われましたか。
森さん:最初は枝の色が赤だったと思うんですけど、嵐の夜に独りでいるみたいな恐怖感さえ覚えるような迫力がありましたね。
川上さん:撮影の時も、何の人工物もない自然の中を歩いていると、不安になるような感覚がありました。それが多分自然の強さとかに繋がると思うんですけど、決して作られた綺麗さではないというのを、写真でもデザインでも見せたいと意識していました。
森さん:植物エキスもそのまま使えば、人によっては効きすぎることもあって、決して「優しい」ものではないんです。自然でオーガニックだからといって、必ずしも優しいとは限らないところが表現されているなと感じましたね。
キラキラコスメとは違った存在感で光を放つ
齊藤:まさにそこの部分はNEMOHAMOが言いたかったことでもあり、他のオーガニックブランドでは言えていない、他と違うというところで、NEMOHAMOにしか言えない表現だったと思いますね。新しいクリエイティブについて、反応はどうでしたか?
森さん:お客様からも、スタッフの反応もすごく良いですね。今までの感じとはまた違って印象がガラッと変わりましたから、新しいビジュアルすごく良いですよねといった話があちこちでされています。直感的に気に入っていってもらっているようで、クリエイティブの力を実感しました。
4月から都内を中心に、ポップアップなど多く店頭に出させていただいています。
このビジュアルのデビューは、銀座三越のポップアップだったんですけど、あの銀座三越のキラキラなフロアの中で、ど真ん中に出ても全然負けていなくて、自信もってポップアップをしていましたね。まわりのラグジュアリーブランドなどのキラキラ感とは全然違う光の放ち方だったんですけど、違った存在感がありました。
齊藤:一番最初に森さんからお話を頂いた時にも「理屈では勝てても直感的なところで勝てない」というのがあって。パッと見て「欲しい!」と思うかどうかはすごく重要で、そういう思いに至る背景に色々なロジックはあれど、直感的に心を動かすという部分はクリエイティブの真骨頂だと思うので、今のような話を聞くとすごく嬉しいですね。
森さん:本当にそうだと思います。それまでは、一時間かかっても話しきれませんよなんて冗談を言うほど語らないと伝わらないようなところがあったのですが、このビジュアルでついにNEMOHAMOに「美しい」という要素が据えられたと感じましたね。
齊藤:他にもバス停での広告を出したり露出が増えましたね。
森さん:個人的な感想なのですが、このビジュアルは大きくなるほど良いなと思って。大きくなるとインパクトも増えるし、繊細な表現にも目が行ってディテールも伝わるかなと感じましたね。
齊藤:以前からのお客様にも好評いただいている感じですか?
森さん:もちろんです。
齊藤:それはすごいですね。ガラッと変えると、既存の方からは、昔の馴染みある方が良かったという声が上がるのが、リブランディングの常だったりもするので。
新しいお客様についてはいかがですか?
森さん:店頭にもサイネージで訴求しているのですが、このビジュアルをきっかけに目を止めていただいて、ご来店して下さる方は増えていますね。
説明がいらないくらいのブランドに
齊藤:今回のリブランディングで新しいNEMOHAMOを見せていく感じになりましたが、森さんの今後の展望を教えていただきたいです。
森さん:私どもの商品は、オーガニックやナチュラルという部分にフォーカスされることが多かったのですが、今回「自然そのものの美しさを表現している」という言葉のように、ストレートにブランディングが伝わるのを目指していきたいですね。
齊藤:クリエイティブの力がますます重要になっていく感じですね。
森さん:どうしても「オーガニックで、こういう作り方をしていて云々…」という伝え方が多い中で、実際のお客様の気に入ってもらえる反応を聞くと「香りが気に入っている、使用感がいい、肌が変わった感じがする」など直感的な部分を評価していただくことも多い。
必ずしも「オーガニックなので」といった部分を経由する必要はないと思っていて、それがオタネニンジンをはじめとする、自然の原料の植物たちの力だとダイレクトに伝わる形のブランドに持っていけるようにしたいです。説明がいらないくらいのブランドに早くなりたいですね。
齊藤:ありがとうございます。川上さんから、この展望について、なにかデザイン視点でのご意見はありますか?
川上さん:改めて思ったのが、この話は意外とシンプルだなと。作り方もとてもユニークだし、そこに沿ってビジュアルや言葉を作っていけば、結果的に自然と、他のコスメと違う光を放つと思うんですよね。あえて特別なことをしなくても、その工程をビジュアル化するだけで十分、NEMOHAMOをストレートに伝えられるのではないかと思いましたね。
「100年続く」というキーワードの発見
齊藤:商品自体がユニークだと、クリエイティブも一気通貫した表現につなげられるわけですね。最後に、今回のリブランディングで、SMOがお手伝いした感想を率直にいただけたらと思います。
森さん:SMOさんに入っていただいて凄く良かったなって思うのが、パーパスを発見するワークショップを提案していただいて、そこで「100年続く」ってキーワードに着地したところです。今まで、電車の会社が始めたという地味なイメージをどう消化するべきかが悩みだったんです(笑)。でもやっぱり鉄道会社というところに根っこはあるし、あと京都っていうのもどう解釈して取り込めばいいのかも模索していました。その2つを「100年続く美しさに責任を持つ」というパーパスでうまく着地できたと思って、この場を借りて感謝をお伝えしたいです。
齊藤:それはとても嬉しいです!
川上さん:個人的には、こんなに寛容にクリエイティブを作らせていただき、すごくありがたいなと。単純に好きなことやってください、とはまた違って、どういう流れでその状態に至ったかという土壌を作られてから私のほうにオーダーいただくので、まず土壌を作られることが大変だと思うのですが、それがないとクリエイティブはできないですから、やりやすかったですね。
齊藤:そこは川上さんのご経験の力が大きいと思いますが、デザイナーさんが最後見えるものにするまで、それを発揮できるような土壌を作り、信頼関係を築き上げていくのが我々の仕事なので、そのところで今回は皆で力を合わせてアウトプットできたのではないかと思っています。今後もそうしたお手伝いができると嬉しいです。お二方とも、本日はありがとうございました。
森 英貴 (もり・ひでたか)
株式会社ビオスタイル 取締役
NEMOHAMO事業部長
大阪府出身。京都で学生時代を過ごし、大学卒業後、2000年に京阪電気鉄道入社。クレジットカード事業
など新規事業の立ち上げや経営企画部門を経験(鉄道は未経験)。2014年よりBIOSTYLEプロジェクトに
参加。2017年の株式会社ビオスタイル設立、2019年の京都四条河原町にGOOD NATURE STATION開業に関わる。2020年より現職。
川上 恵莉子 (かわかみ・えりこ)
アートディレクター / グラフィックデザイナー。
東京藝術大学卒業。2018年より自身のスタジオを設立。グラフィックデザインを基軸に、ブランドのアートディレクション、商品開発、パッケージ、装丁、プロダクト、空間と活動は多岐に渡る。主な仕事に、「RURU MARY'S」、越後妻有「大地の芸術祭」、「LUMINE NEWoMan The Bargain」、「LAFORET XMAS」、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」等。主な受賞に、 JAGDA新人賞、JAGDA賞、ADC賞、等。
Instagram & Twitter: @erikokawakami_ www.erikokawakami.com