パーパスを発見し、それをステートメントとして表現する際の最終段階では、そのステートメントが良いものになっているかどうかをきちんと評価し、必要に応じて見直すことが重要である。このパーパス・ステートメント評価の際には一定の基準を用いており、そのひとつに「オーセンティックかどうか」の基準がある。
オーセンティックという考え方に日本語でしっくりこないという方のために、この記事では、オーセンティックなパーパスとはどういうことなのか、深く掘り下げて考えてみよう。
オーセンティックとは?
オーセンティック(Authentic)は名詞のAuthenticityから来ている。
英辞書では、Authenticityを次のように定義している。
事実に適合している、事実に基づいているとして受け入れられる、信じるに値すること。
原型に忠実に、本質的な特徴を再現すること。
原型と同じように作られている、原型と同じように行われている
偽りや模倣でない:本物の、実際の
自分自身の人格、精神、性格に忠実であること。
つまり、Authenticityとは、そのクオリティが、本物であり、真正であり、真実であるということである。
本物であることの重要性
ビジネスにおいて、Authenticityが重要であることは間違いない。本物であるということは、顧客との信頼関係を構築し、購買行動を駆り立て、周りに薦めてもらいやすくなる。
また、組織のパーパスを活性化させる上でも不可欠である。組織の中でパーパスを軸としたムーブメントを起こすには、皆がまずはそのパーパスを本当に信じていなければならない。そうでないと、実際に行動に結びつかず、そのパーパスが実現する可能性は低いからだ。これは言い換えれば、パーパスがオーセンティックであれば、人々はそれを信頼し、信じるようになり、日々の仕事に取り入れるようになる。
Authenticityの2つの側面
Authenticityを日本語で解釈したときに、"らしさ "とされることがあるが、外見主義になりがちである。したがって、「らしさ」の観点からパーパス・ステートメントをレビューする場合、内容や形(たとえば、言葉選びやトーン)として、その企業やブランドのアイデンティティに忠実であるかどうかをチェックしている。これは "Explicit Authenticity(目に見えてわかりやすい真正性)"である。
一方で、" Implicit Authenticity(潜在的な真正性)"がある。
ピザを例にとってみよう。「本格的なピザ」を思い浮かべた時に、薄くてクリスピーなクラストにシンプルで最小限のトッピングが美味しそうに乗ったピザを想像するかもしれない。しかし、それがすべてではないということもお分かりだろう。誰がそのピザを、どのように作っているのか?これがここで言う「潜在的な真正性」である。
パーパスステートメントを評価するにあたっての、潜在的な真正性とは、言葉でどのようにそのパーパスが表現されているかだけではそのパーパスを完全に評価できないということである。ステートメントの内容や言い回しが自社のアイデンティティに忠実かどうかの視点でステートメントを見直すと同時に、潜在的な部分、つまりそのステートメントがどのように発見され、表現されたのかについても意識しながら見直す必要がある。言い換えれば、言語化に関わる人々とプロセスが重要なのだ。
米ベスト・バイの元CEOによるビジネス書『The Heart of Business』の中で、著者はこの点をうまく表現している。
ベスト・バイの復活は、「人びとのニーズに対応できるよう、テクノロジーを使って生活を豊かにする」という会社のパーパスを定義したこと、そして全社的にそのパーパスを日々の行動に反映させたことが大きく関係していた。ベスト・バイのパーパスは、コミュニケーション・コンサルタントが思いつきの表現をパワポで巧みに示して見せたものではない。社員がベストの状態にあるときの姿を観察することによって、有機的に生み出されたものだ。これが、本物であり、しっかりと根付いた信憑性(authenticity)を与えているのだ。
さいごに
重要なポイントは以下の通りである:
パーパスステートメントの表現にわかりやすい真正性があるかどうかをチェックする。
さらに、潜在的な真正性を担保する。パーパスが内なるところから見つけ出されたかどうか。組織の人々によって推進され、組織の人々を深く巻き込むパーパスとなっているかどうか。パーパスの表現の段階では、コンサルタントが介入しても彼らはガイドでありファシリテーターでしかなく、運転席で実際に運転するのは、その会社の組織の人々でなければならない。
シリーズ よいパーパスとは 『Inspirational 編』『Simplicity 編』、
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