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執筆者の写真smo inc

地元山梨に根を張った和菓子ブランドにみる、VUCA時代の新しい経営の形

更新日:2023年3月27日

「人々が持っている多くの素晴らしい技術と人材を上手に組み合わせて、新たな価値、真の価値を創ることが使命」を掲げるHACK JAPANホールディングス株式会社と、山梨県に根差した和菓子の老舗・清月のコラボから生まれた、山梨の果実を使った和菓子の新ブランド「和乃果」。甲府の山奥の牧丘本店に続き、昨年秋には東京駅での出店を果たしました。フルーツの里・山梨の果実の美味しさを存分に引き出し、かつ洗練された和乃果ブランドをリードして創り上げたハックジャパンの保坂東吾社長に、和乃果 牧丘本店でお話を伺いました。


(インタビュー:SMO 齊藤 三希子)



 

齊藤:前編の本社でのインタビューに続きまして、こちらでのインタビューは私が担当します、よろしくお願いします。和乃果が予想以上に素敵な空間で感動しています。まずは、元々この事業をやることになったきっかけから教えてください。


保坂さん:南アルプスに清月というお菓子屋さんがありまして、そこの野田社長が13年ほど前に南アルプスの商工会で夢現塾という若手の塾を立ち上げるということで、僕はそこの一期生になったんです。

元々僕は南アルプス出身なので、小さい頃から清月のメイン商品のイタリアンロールケーキを食べて育ってきてるんで、野田さんと食事しながら、僕が好きなイタリアンロールケーキを東京で出しませんかという話をしたんです。野田さんも昔東京で出したことはあったんですが、お前がやるんだったら俺ももう一回チャレンジしてみたいと。そこで、HACK JAPANと清月というそれぞれの会社の強みを各々出し合って、それを形にしていくところにSMOさんに入っていただいたんですね。


齊藤:なるほど。イタリアンロールケーキが昔から好きだったというのと、保坂さんが南アルプス出身で、地元を元気にしたいという想いを掛け合わせた感じでしょうか。その2社で組んでこそ、というプロジェクトですね。


保坂さん:コロナがあったりVUCAという先が読めない不確実性の時代において、僕ら中小企業が新しいことをやる時に、自社のリソースだけでやるのはリスクが非常に高いしナンセンスだと思うんですよ。そこで複数の会社のリソースを持ち寄って、1+1が2じゃなくて3とか5になるようなことが、これからの中小企業の経営・事業のやり方で必要だと思って。で、そのモデルの第一弾をやりませんか?というプロジェクトを提案しました。



埋もれた価値の需要創造を


齊藤:南アルプスはさておき、日本全国にある中小企業の先駆けとなるような感じですね。


保坂さん:日本全国まで伝われば良いですが、山梨県のこれからを担う世代がそういうことを考えながら、他社と交わっていくような経営をしてもらいたいという思いが基本にありますね。



齊藤:山梨の次世代へ示す形で、清月さんとコラボして掛け算になるコラボ事業を立ち上げたわけですね。では、和乃果のパーパス「何のためにやるのか」について今一度お話しいただいてもよろしいですか。


保坂さん:HACK JAPANの企業としての使命「日本に埋もれている価値を新たな視点として需要創造していく」。僕らがなぜ和乃果をやるかっていうのも、これとほぼ一緒だと思います。ここの形をこう変えれば、もっと付加価値が高いものとなり、新しいマーケットに入れるんじゃないかっていうことを僕は常に考えてるんで、そういう所を発見するのがHACK JAPANの大事な部分で、かつそれを一緒にやるパートナーですよというのがあります。


齊藤:まさにハックするという感じで(笑)。その一事業が和乃果であり、それを具現化したものがこのお店であり、ブランドでありってことですね。


保坂さん:そうです。





齊藤:イタリアンロールだけで見ても、今まで無い視点や切り口で変えて見せてブランド化をされて、新たな発見や良かったこと等があれば教えていただきたいです。


保坂さん:多分僕らの発見っていうよりは、一緒にやった清月さんの方が発見があったと思うんです。元々清月さんって麻布昇月堂という名前で、約90年前に東京の麻布で和菓子のお店をやってたんですよ。この和乃果の店舗にも当時使っていた落雁の型を展示していますが、この清月のルーツをもっと掘り下げて現代のお菓子にアレンジし、かつ山梨県の強みの果物にフォーカスして、和×果物×現代を取り合わせてやるっていう。


齊藤:なるほど。落雁の型に麻布って彫ってあるのを見て、何でだろうと思っていたのですが、そういう関係性があったんですね。



山梨から海外へ


齊藤:HACK JAPANの社内も変わりましたか。


保坂さん:だいぶ変わりましたね。HACK JAPANの子会社が日本連合警備なんですが、和乃果を通じてグループ間で交流も増えました。警備員など、従事している人たちがとても興味を持ってたりする。今までは社内の新規事業って、社長が勝手にやってるからいいよね、と周りの人間は興味を持ってなかったんですけど、和乃果の事業でだいぶ変わって。それは、日本連合警備のパーパスを策定したのが大きいと思うんです。以前よりもだいぶ会社全体のモチベーションが違いますね。


齊藤:それは嬉しいですね。社外への影響はいかがですか。


保坂さん:山梨学院大学がオックスフォードの留学生を受け入れるプロジェクト第一段として、留学生が和乃果のプロジェクトに参加する企画が進行中です。外国人向けにどう売っていけるのか、又は海外に出店できる可能性はあるかというのを、留学生にマーケティングとレポーティングをしてもらっていて。


齊藤:素晴らしいですね。レポートの中で印象的だったことを教えていただきたいです。


保坂さん:フランスとイギリスから来てる留学生は、日本に比べてSDGsの感覚がもっと進んでいて、和乃果は過剰包装だって言われたんです。僕らはお客様に取っていただいて喜んでいただきたいから、結構外装にこだわったんですが、海外ではそうじゃないですよって。びっくりしましたね。

でも中国だけは別で、この過剰包装がいいというレポーティングでした。あとは健康志向も進んでいて、最初は栄養成分の表示をしてなかったのですが、カロリー、糖質などが何グラムかの表示は絶対した方がいいと言われましたね。あとは干菓子がチーズに変わる新しいお酒のおつまみになるという意見も海外の子たちから出ていましたね。


齊藤:今後海外への展開などは考えているのでしょうか。


保坂さん:やっぱり展開するなら世界中から人が来るニューヨークですね。良ければ評価してもらえるところで勝負してみたいです。あとは華僑がいっぱいいるので、ビジネスパートナーを見つけて逆輸入とかも狙いたいですね。


齊藤:それは楽しみですね。国内はどうですか。


保坂さん:国内で、もう一店舗やるとしたら京都ですね。日本の海外の玄関って京都だと思ってるんで、そこでお酒とのペアリングを楽しめるデザートコースを出すのをやりたいなっていう。カクテルはもちろん、時代的にもお酒飲まない人も多くいるので、ノンアルコールやお茶のドリンクなんかも考えています。茶葉の開発もしているので。



お客様を裏切らないことから築くブランドづくり


齊藤:もう夢は広がっていく感じですね。山梨学院大学とコラボしたり、まさに地域に貢献しながらもビジネスも広げていって。それは和乃果が、ブランドとして認知されていったからっていうのが大きいと思うんですけど、ブランド作りにおいて大変だったことは何でしょうか。


保坂さん:大変なことだらけですかね(笑)。


齊藤:そうですよね(笑)。色んな日本の企業の方が、日本を元気にしたいと思われていると思うんですよ。そういった時に、私はブランドの力が肝になってくると思っているので、何かそこにアドバイスできるとしたらいかがですか。


保坂さん:これは凄く難しい質問で、ブランドってこうなったらいいなというイメージは、当然やってる企業側がつくるものでもあると思うんですけど、最終的に評価するのって買った人なんですよね。良かったからまた来てくれるっていうのでブランドは出来上がっていくと思っているので。だからまず、期待を裏切らない。僕らがやってるのは果物を使ったお菓子なので、100パーセント山梨の果物を使い続ける。お客様からはわからないから海外産を使うというようなことをせず、そこの根幹はブレないようにしています。


齊藤:原料からすべて日本産だと、買う人は安心しますよね。


保坂さん:そう、そしてそもそも、和乃果のお菓子って余計な化学物質が全然入っていなくて、安全なんです。山梨産の果物、そして化学物質を使わない、この2つのこだわりを動かしてしまうと、売っている側のスタッフも嘘をつくことになっちゃうんです。この商品はこうですっていうのを自信を持ってお客様に受け入れていただく。

そして、その背景にあるストーリー、例えば果物でいうと、僕らが付き合っている多くの農家さんの顔を思い浮かべながら話していくことで、ようやくお客様に伝わって食べていただく。そこで和乃果ってこういうお菓子なんだと理解してもらって、次は人に勧めてみよう、になると思うんですよ。だから基本的なことをしっかりやる、つまり最初に立ち上げたコンセプトだったりパーパスだったり、そこからブレないってことじゃないですかね。けっこうどこかでブレちゃうんですよ(笑)


齊藤:そうですよね。例えば数字とかに奔走されて。


保坂さん:そう、うちですと数字は全然まだついてきてないんですけど、でもブレずにやってるんです。



好奇心、そしてチャレンジを後押ししたい


齊藤:そこがやっぱり素晴らしい経営者と、そうでない経営者の分かれ目だと思います。


保坂さん:僕が素晴らしい経営者かどうかは置いといて、結局これをやりたい狙いを達成したいのでもう突き進むしかないじゃないですか。


齊藤:そこに嘘がないわけですね。信じて達成したいというパッションの部分が揺るがないから目先の数字には囚われずに強くいられるのだと思います。


保坂さん:数字は後からついてくるんで。努力してくれるスタッフがいっぱいいるので、あんまり心配していません。


齊藤:それは頼もしいですね。やっぱり日本の中小企業が元気にならないと、日本も元気にならないと思うので。


保坂さん:若手の経営者は、チャレンジしない、既存の自分の領域から出ない。ますそこから一歩飛び出てみることが必要なんですよ。一人では怖いなら、誰かと手を取り合って出るのでも良いと思うんです。ただその一歩を踏み出さない限り何も変わらない。リスクを取りに行かないとチャンスは絶対無いんですよ。だからそこを踏み出してもらいたい。

そのために経営者に大事なのは、好奇心を持つことなんですけど、好奇心を持ってない人が多すぎるんです。ワクワクすること、チャレンジすること、色んなことに興味を持つようにっていうのは僕が常々言っていて、日本連合警備でパーパス浸透させるために毎週作っていた動画でも話しました。

ユニクロの柳井さんも好奇心が一番大事だって言っていますね。今の山梨県の経営者を見ても、好奇心持ってワクワクやってる人が少なすぎる。そこを後押しできるような会社になっていけたらなと思ってやっています。


齊藤:いいですね。こういうことできるんだ、というのは後押しになりますよね!今後もぜひ楽しみにしています。本日は素晴らしいお話をありがとうございました。 



 

保坂 東吾(ほさか・とうご)

HACK JAPAN ホールディングス 株式会社 代表取締役


大学卒業後、警備会社やIT系ベンチャー企業を経験。24歳で祖父の警備会社へ移り、会社をホールディング化。

山梨県の果実を使った新スイーツブランド「和乃果(わのか)」を立ち上げ、2021年4月に巨峰の丘と呼ばれる牧丘の里山内の古民家に本店をオープン。2022年11月には東京駅構内ギフトパレット内に新店舗「和スイーツ 和乃果」を構える。



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