未使用のまま廃棄されてしまう商品をお得に買い物するだけで商品ロス
削減に貢献できるサービスの提供を開始した株式会社リアコネ。
消費財ビジネスと地球環境のサステナビリティの向上を目指す、代表取締役の服部さんと広報の笹山さんに、廃盤日用消費財の現状、サービス誕生の背景やこれからの展望についてお話をうかがいました。
(インタビュー:SMO 齊藤 三希子)
齊藤:早速ですが、服部さんがリアコネを立ち上げた経緯をお聞きかせください。
服部さん:大学院卒業後、新卒で大手日用品メーカーに入り、研究開発職として台所洗剤やお風呂用洗剤の開発をしていました。商品を沢山作って一個あたりのコストを下げ、多くのお客様に買っていただくビジネスモデルの弊害として、未使用のまま売り切れずに捨ててしまう物があったというのが最初の気づきです。その後、新規事業に異動し、未使用で捨てている物をどうにかできないかと事業開発をしたのち、社内の制度を使って出向企業という形でリアコネ社を立ち上げて1年ほどです。
齊藤:廃棄される商品ロスというのはどれくらいの量なのでしょうか?
服部さん:ドラッグストアに置かれている物は基本全て同様で、トイレタリー製品、化粧品、加工食品やペットボトル飲料なども合わせて、年間で大体2700億円くらいの商品価値が燃やされているので、結構なボリュームがあるという感じですね。
齊藤:廃棄のコストもかかりますよね。
服部さん:はい。廃棄場所への輸送コストや手間もかかってくるので、規模は大きいのかなと思います。
齊藤:もったいない、ということでリアコネを立ち上げようと?
服部さん:そうですね。通常、商品は段ボールに入った状態で沢山積まれて各ドラッグストアに運んでいますが、その綺麗な段ボールのまま、燃やしているのを実際に見て。全部使えるのになんで捨てるんだろうと。少しでも使ってもらえるような形をリアコネの事業を通じて実現させたいと思いました。
齊藤:リアコネの具体的なソリューションをお聞かせいただけますか?
服部さん:廃棄の2700億円の内訳が2パターンあり、一つはメーカーさんの倉庫で綺麗な段ボールで積まれたまま一度も外に出ない未出荷品がそのまま廃棄工場に運ばれるという、とてもきれいな状態の未出荷品パターンです。こうした滞留在庫をリアコネ社が買い取って、それを別のお客様に売るという「リアコネBOX」というサービスを展開しています。一般のお客様に低価格で売ってしまうと、ブランド棄損が発生してしまうなど弊害があるので、例えばガソリンスタンドやスポーツチームなど自分たちでタオルを洗っているような特定の事業者様などに洗濯用洗剤を販売するというように、マーケットを変える形で解決策を探っているところです。
お客様を分けることで、「安売りをしまくっている」というメーカーサイドの印象など、ブランド毀損も抑えられます。みんなが使う商品なので、安くすれば買っていただけるのですが、それをやってしまうと次の商品が売れなくなったり、ブランド毀損に繋がるのでやはり価格は下げられない、だからどうしようもなくなって、燃やしましょうとなってしまうところを、違うお客様に売っていける機会を作りたいと思っています。
もう一つはメーカーさんから出荷され、小売店の店頭や倉庫から戻ってきてしまうものです。小売店での陳列スペースは限られるので、新しい商品を置いてほしいと入れ替えられてしまい、売る場所が無くなってメーカーに戻されて基本的には燃やすという感じになっています。一部、社内販売をしたり、メーカーが何もしていない訳では当然ないのですが、世に出たものと全く出なかったものという二つの背景があり、それぞれに対してソリューションを準備しています。メーカーから出荷した物に対しては、返品されてしまう商品に優先的にインセンティブやポイントをつけて一般のお客様に買って頂く機会を作っています。
齊藤:日の目を見ない商品がそれだけあるとは驚きです。具体的にどうやって買えるのでしょうか?
服部さん:メーカー側が新しい商品を出す時や、リニューアルする時は、旧商品が返品される大きなタイミングなので、その新商品発売の前のタイミングでお客様にお知らせして、買っていただけるシステムをLINEを使って構築しています。「インセンティブやポイントが付きますよ」というような買い物体験ですね。
ドラッグストアに置かれている商品って、ある意味“新しさ”で店頭のスペースを獲得してお客様に買っていただくというビジネスモデルなので、リニューアルというのが重要なマーケティングアクションになっていて、そのタイミングの切り替えでどうしても、売り場がなくなってしまうので、そうなる前にお客さまに買ってもらう様なスキームを作りたいなと思っています。
齊藤:服部さんは、燃やされている現場を見て、とおっしゃっていましたが、起業しようと思った理由は他にもありますか?
服部さん:各メーカーさんそうだと思いますが、高品質な技術的要素も組み込まれた商品を全く使われることなく燃やすって、さすがにおかしくない?というところが一番大きいです。
使ってくれる人が絶対いると思うので、
少しでも使ってもらおうと。
齊藤:服部さんの話を聞くと共感して、賛同したいという気持ちの方は多いと思うんですけど、実際に既に参加されている企業はありますか?
服部さん:今は一部の大手メーカー様の商品を買い取って、一般のお客様に販売を進めていて、これからの話ではありますが、飲料系メーカー様や製菓メーカーなどいくつかの消費材メーカー様にも興味を持っていただいています。
実は、あるメーカーの担当者の方に
とても興味を持って頂き、副業でリアコネ社に参加していただくことになって、リアコネ社としても想いを持っている方に副業でジョインしてもらって企業を広げていくのって、可能性があるのではないかと思ってます。
齊藤:働き方のスタイルとしてもいいですよね。さて、わたしたちはブランディングの会社でパーパスという「なんのために存在するのか、なんのためにやるのか」を軸にしている会社なんですけれど、リアコネさんもパーパスは明文化されているのでしょうか。
服部さん:今、副業とインターン生を入れて13人参加して頂いていますが、フルでいるのは私だけなので、どういう思いなのか明文化しなきゃと思いながら、会社としては明確なものは作れてないというのが正直なところです。ただやりたいことはシンプルだで、未使用のまま捨てられちゃうのって無駄だよね、なんとかしようよ、というところなので、そこからうまくパーパスを作っていく必要があるなと考えています。
齊藤:これからどんどん会社が大きくなっていくと、コアとなる考え方が明文化されていると良いかもしれませんね。
服部さん:パーパスは、どれくらいのステージで作った方がいい、作るべきなのでしょうか?
齊藤:多くの成長・成功企業を見ていると最初は、社長自体がパーパスだからいいんですよ。ただ、目が届かない、自分が関与できないってなった時にはあったほうがいいと思います。服部さんの中にパーパスはきっとあるんですよ。タイミングはそれぞれあるとは思うんですが、常に頭の中で繰り返し考えているというのはいいことかなと思います。あと、明文化するときにみんなを巻き込んでやっていくと、それが浸透するし、参加感があるのでそこはみんなでやるといいかなと思います。
服部さん:社員のみんなで作っていくということですよね。
齊藤:そうですね。お話をきいていると副業で色々な人が出たり入ったり、プロジェクト型でやっていく企業なのかなと思うのでその場合はみんなで考えて、考えた人がまたエヴァンジェリストみたいになってどんどん広めていく方が企業風土にも合ってるのかなと思います。強烈なトップダウンよりはみんなで作っていくという。特に、ステークホルダーが多く、いろんな人を巻き込んでいかなきゃいけないので、お客さんと自分たちだけじゃなく多方面に広がるから。だからこそ面白い感じがします。
話は変わりますが、フランスでは今年から「衣服廃棄禁止令」が施行され、売れ残りの新品の衣類を企業が廃棄することを禁止されました。方向としてはいいと思うんですけど、ただ私は脱成長という考えには反対で、成長はし続けなきゃいけないと思っていて、その中で何ができるのか、共存できるのかが重要だと思っているので、服部さんの考え方にすごく共感します。
服部さん:私も競争はあるべきだと思います。製品をより良くしたり、お客さまの課題を見つけるなどはやはり競合がいてこそで、その競争に勝つために生産量を増やすというのは当然の流れかなと思っています。でも、作りすぎちゃうところをなんとかしなくちゃいけないのは間違いないので、生産と販売の両面からやるべきだと思っていて、そこをうまく調整していくために、作った製品を最後まで販売する手段はリアコネ側で用意する。将来的には、どんな商品が誰に何の商品と一緒に売れたのか、その結果をメーカー様にフィードバックすることで、需給予測の面でも貢献したいと思っています。
齊藤:作りすぎなければいいというゴールに加えて、そこにいく過程の荷重を支えるというのは重要だと思います。さきほど、実際に二つのカテゴリーの販売方法があるとおっしゃっていましたが、現在どのように進んでいるのでしょうか?
服部さん:一般のお客様へは、LINEを使ったサービスでお客様と一緒に買い物体験を作る所から着手しています。toBのリアコネボックスの方はまさに先月末にリリースしたばかりです。 我々のスタミナの面もあるのでどちらかに絞るタイミングはくるかなと思っています。
齊藤:今まさにトライの期間なんですね。お客様側の反応もお聞かせいただけますか?
服部さん:LINEでのサービスは、大体今6000人くらいのユーザーさんに登録・ご参加いただいていますが、お客様としては大きく二つ属性があるかなと考えています。一つは「安く入るなら嬉しい」というシンプルな方々、もう一つが「フードロスなどに対する意識を持って貢献できる方を選びます」という方々で、それぞれのユーザーさんに共感をいただいています。
齊藤:ローンチされたリアコネBOXはどうですか?
服部さん:今はガソリンスタンドなど中小企業の事業者様や、部活動やスポーツ少年団向けに販売をスタートさせていただいてる状況です。自分たちで洗濯をしたり、日焼け止めをたくさん使っているような方々です。コストダウンがきく+SDGsに貢献できます、という二つの側面でお客様に使っていただくというような形です。
齊藤:いいことづくめな感じがしますね!将来的に10年、20年後に自分たちはこうなっていたい、世の中こうなっていてほしい、というのはありますか?
服部さん:今は作ることにすごく意識がいって、メーカーとしていかに安く、多くのお客さんに買ってもらうかという構造になっていて、作りすぎちゃった後のことってなかなかケアが行き届いてないのかなと。需要予測をして生産量の調整をしても、限界があるのかと思います。未使用製品の廃棄の経済規模は、冒頭でお伝えしたように2700億円相当と大きいですが、全体の販売量からすると1-5%程度です。したがって95%程度は各メーカー様これまで通り競争して生活者に商品を通じた価値提供をして頂き、その背景でどうしても溢れてしまう滞留在庫・返品商品の数%部分についてはリアコネを媒介にメーカー各社協力をしてなんとか捨てない方向でやりましょう、というような世界を作りたいと思っています。
齊藤:最終的には日用品だけじゃなくて他もでしょうか?
服部さん:そうですね、他の業界にも転用できると思っています。
リアコネ広報 笹山さん:コスメの余った在庫を経済的に困窮したシングルマザー家庭に差し上げるNPOのサービスがあって、在庫の有効活用という意味では近いのですが、なるべく売上に還元した方が健全ですし、せっかくの在庫にマネタイズポイントがもうちょっと残ってるんじゃないかなって。
服部さん:まさにそこは私も思っていて、支援の一環として寄付するパターンは、 メーカーからすると燃やす費用は減りますが、基本的にはキャッシュリターンがない。 メーカーとしては苦しくて、サステナブルじゃないので、ちゃんとお金が回るような仕組みで行った方がいいと思っていています。イギリスに、低所得者しか入れないコンビニのようなお店があって、70%OFFくらいで買えるらしいんですが、その会社が言うには 、あげるより社会に復帰させるような仕組みの支援の方がいいと。ちゃんとお金を出さないと買えない環境を作ってあげるのが心理的にも良いという点にすごい共感をしていて、あげるよりも売るというところをまず目指し、循環させたいです。まだこれからですが、共感してくれるメーカーさんを探しながら一緒に取り組んでいきたいなと思っています。
齊藤:長く続く仕組みづくりが重要ですね。今日はどうもありがとうございました。
服部 昂 Takashi Hattori
2012年千葉大学大学院工学研究科修了、2021年慶應義塾大学大学院システム
デザインマネジメント研究科修了。
2012年ライオン株式会社入社。
R&Dにて浴室用洗剤、食器用洗剤等の製品開発・研究に従事。
その後新規事業開発部門にてデザイン思考を活用したアイデア創出経験を経て2021年に株式会社リアコネ起業。